自己紹介がてら、私の中にこつこつぽけっとが生まれるまでのエピソードをいくつか書いておきたいと思います。
幼少期から手芸店で働き始めるまで
私は小さな頃からぼんやりする癖がありました。
自分なりに考えごとをしているのですが、やるべきことと同時にそれができずに、よく「はやくしなさい!」と急かされているような子どもでした。
好きなことは、頭の中でわくわくと浮かんだものを絵に描いたり、あったらいいなと思うものを見よう見まねで作ったりすること。
母の裁縫箱を漁っては、ちくちく縫い物をしていたので、裁縫箱の中はいつもごちゃごちゃしていました。
それでも、小学校は手芸クラブ、中学校では家庭科の実習でやる程度。高校では部活のお守りを作るくらい。
成長し、勉強や部活などのやるべきことが増えていく中で、ものづくりに割く時間はだんだんと減っていきました。
そんな私が手芸店に就職したきっかけは、学生時代に縫ったひとつのバッグでした。
当時の私は、子どもが好き・教育について考えるのが好きと入った教育学部で、「好きというだけでは教師にはなれない」と薄々感じていました。
朝の支度中気がそれて時間を忘れて、電車に乗り遅れ、授業に遅れる。
教育実習に行けば教具を作るのに徹夜するほど夢中になって、他のことが疎かになる。
そんなようなことが積み重なって、周りには教員になるために正しく努力している(ように見えた)仲間がいる中で、自分もそうありたいのに頑張れないと思うことがだんだんと増えていきました。
そうして大学4年の秋、教員採用試験に落ちました。
そのときにはじめて、「教員になれなくてもいいんだ」という諦めがついたような気がしました。
ちょうどその頃、久しぶりに手芸屋さんに行きました。子どもの頃から母に連れられて、ときどき足を運んでいたお店。
セール期間中だったのか、店内は混雑していました。
人の合間を縫って、あたたかそうな生地が並ぶ棚から、目を惹く赤い色の布を手に取りました。
派手さのない、こっくりとした深い赤。見れば大きなチェックの柄をしていて、ぽつぽつと入ったネップがかわいくて、気に入りました。
この布で冬に持つバッグを作ろう。
そう決めてから、バッグの内側に使う布を別の棚から選びました。
色で目についたその布には、よくみると主張しすぎない素敵な柄が入っていました。
その柄を気に入って、バッグの内布に使うことにしました。
まだ生地が縫いやすいかどうかとか、糸合わせすら知らなかった私。
そんなことはお構いなしに、とてもわくわくしていました。
家に帰ってから、バッグの形を考えました。
荷物が多いし、たくさん入る大きさがいいな。
重たくなるから、肩から掛けられるのがいい。
中身が見えないようにフタもほしいな。
フリルも付けたらかわいいかもしれない。
そうやってひとつひとつを決めて、型紙を作って布を裁って、思ったように縫いました。
「芯」なるものを貼ると何やら丈夫に仕上がるらしいと知り、たまたま姉が持っていたドミット芯をもらって、表布の裏に貼ってみました。
途中持ち手の強度がないことに気づき、中に太いテープを挟むことにしました。
針も糸もありもので適していなかったのか、厚みの出るところは縫い目が乱れて苦戦しました。
それでも作っている最中、私は自分が目一杯いきているという感じがして、夢中で作り上げることができました。
できあがったバッグを手にしたとき、とても満ち足りた気分でした。
ものづくりが好き。
こんなに夢中になれるのに、どうして今まで忘れていたんだろう?
仕事にでもしなければ、またやるべきことに追われて忘れてしまうかもしれない。
そう考えた私は、大学を卒業したら手芸店で働こうと心に決めました。
面接には、このとき作ったバッグを持っていきました。