布売り場がひとたびセールになると、お客様がたくさんやってきます。
洋服を作ろうと思えば数m必要になりますし、布を見ていたらあれもこれも欲しくなりますから、割引で買えるのは大きいですよね。
私が働いていたお店では、2~3か月に1回セールを行っていました。買うかどうかで迷っているお客様とお話したとき、たびたび耳にしたのが「前買った布もまだ使ってないのに」「家に布がたくさん溜まってるから」という言葉でした。
それでも布が好きだったり、ソーイングをやりたいという気持ちがあるので、セールと聞けばお店に足を運んでしまうし、お店に来たらワクワクして、また布を買ってしまうんですよね。
私も家に宝の山があるのでよく分かります。
ではなぜ、何かを作りたいと思って布を買うのに、何も作らずにそのまま時間が過ぎてしまう…ということが起こるのでしょうか。
人それぞれに事情があると思いますが、私は根本の要因は「ソーイングが必ずしも生活に必要なものではないから」だと考えています。
小物も洋服も子ども服もすぐに完成品が買えるし、自分で何かを作らなくても生活できる時代。下手すれば布を買って、わざわざ時間をかけて作る…そっちの方が高くつくかもしれません。
思い出すのは、新型コロナウィルスが流行りだした2020年の上半期。多くの人が一度にマスクを必要としたため、一時期使い捨てマスクの入手が困難になりました。
それに伴い手作りマスクブームが起こり、手芸屋さんではWガーゼが飛ぶように売れ、マスクゴムやその代替品がフリマアプリで高値で取引されるなど、普段はソーイングをしない人たちも巻き込んで、たくさんの人がマスクを作ることになりました。
当時は先の見えない不安の中、マスクをすることが生活するのに必要不可欠。
買えないなら作るしかないと、ソーイングが必要とされ、ミシンもたくさん売れました。
それをきっかけにソーイングの楽しさに目覚めた人もいたでしょう。
私にとっても、ソーイングは価値のあるもの。
だからこそ、自分や多くの人が陥る現状をしっかり捉えたいと思っています。
あらためて、コロナ禍以前のような日常が送れるようになった今、ソーイングは生きていくのに必要でしょうか。
私たちは毎日一生懸命生きている。
自分が自分であるために。
誰かを生かすために。
他のことで頭をいっぱいにしていると、ソーイングはどうしても後回しになるもの。
「好き」な気持ちを忘れて、時間が過ぎてしまうものなのではないでしょうか。
『日々の生活の中で、こつこつとソーイングの時間を持ち、自分に立ち返る。』
こつこつぽけっとの第一歩は、ソーイングを好きな気持ちを忘れないこと。
1日の中で少しでもいいから、ソーイングのことを考える時間をもつことから始まります。
好きな布を引っ張り出してみることでも、ソーイングの本を開いて眺めてみることでも、アルバムやSNSをひらいて自分や誰かの作ったものを見てときめいてみるのも、「こつこつぽけっと」
実はこのブログを見ている今この瞬間にも、あなたはもう「こつこつぽけっと」しているといえるのです。
こうして見つけてくれて、読んでくださってありがとうございます。
そして何よりしてほしいことは、「こつこつぽけっと」がどんなに短い時間でも、自分でそれを「できた!」と認めてあげること。
忙しくて時間が取れなかった日も、ソーイングが好きで、やりたいなと思ってる自分を思い出してみて「いいよね~」と感じること。
そうして「好き」を感じる時間が増えると、こつこつぽけっとの次のステップがやってきます。
さて、話は戻りますが「忘れてしまうこと」がソーイングを阻むなら、それは他の趣味についても同様に言えるでしょう。
読書やゲーム、映画鑑賞、他にもいろいろ。同じ手芸の中でも、刺繍や編み物、ビーズアクセサリーなど…
中でもソーイングは、やりたいという気持ちよりも「難しそう」「大変そう」という気持ちが大きくなりがちなようです。
次のお話では、どうしてソーイングのハードルが高いのか、考えていたことを書いてみたいと思います。